ハックのあらゆるものをハックしていく『Hack To 8×9』
今回は、ハックの校長先生であり8x9Craftの生みの親でもある寺園先生に突撃インタビュー!
ハックを作った熱い想いや、たくさんの子ども達に触れることで自身の子育てに変化が生まれた話など読み応えたっぷりのインタビューとなっております!
ぜひ、ご一読くださいませ(*^▽^*)
プログラミングに知識や才能は必要ない
寺園先生は8×9の創始者であり、校長先生でいらっしゃいますね。まず8×9を作るきっかけを教えていただけますでしょうか?!
今から10年前、Android開発の仕事をするようになってオープンなコミュニティに関わるようになったのがきっかけです。そこでたくさんの学生や社会人の人達と技術の話をする機会ができて、それがとても楽しく刺激的だったんです。
その時思ったんですね、「もっと若い頃からこんな風に勉強できる学びの機会があったら良かったなぁと」 当時、息子2人がちょうど小学生だったので「自分が子どもにできることはこれだ!」って感じでプログラミングの習い事を思いつきました。
プログラミングってコンピュータに詳しくないといけないとか、英語ができないといけないって思われがちですが、実際は特別な知識や才能は不要です。老若男女問わず誰でも学ぶことができるんです。だから子どもでもできると思っているし、早く学んだ方がその分世界が広がるから、早い段階でそういう経験をしたらきっとすごいことになるだろうなと。
実際、僕だってプログラミングがきっかけで本を書くことになったし会社も作ったので、プログラミングだったら誰も想像がつかないことが起こるんです。
で、そんな話を当時、仕事仲間であり飲み仲間でもあった森田さん(8×9代表取締役)によくしていたんです。 そしたら僕があまりに毎回話すもんだから「じゃあ手伝うからやりましょう!」ってなりました(笑)
そんなエピソードがあったんですね!それでは寺園先生ご自身がプログラミングを始めることになったきっかけを教えてください。
中学生の時に 『マイコンBASICマガジン』という雑誌を見たのがきっかけです。この雑誌にはいろんなゲームがソースコード付きで掲載されていてプログラムを打ち込むとゲームを遊ぶことができたんです。
ゲームがお好きだったんですね。
はい。僕は小学校の頃からゲームが大好きで当時はファミコンがしたくてしたくてしょうがなかったんですよ。でも親からは勉強の邪魔になるからとずっと反対されてました。
僕が中学生になってようやくファミコンを購入した時だってすぐ破壊されちゃいましたから。だからゲームが原因で親子関係はもう最悪でしたね。
ゲームプログラマーになりたいという夢すら「ゲームをやりたいからでしょ!」って感じで認めてくれませんでしたし…今考えると酷いですよね(笑)
そうだったんですね…。でもプログラマーの夢は諦めなかったと。
でも、これだけゲームプログラマー目指してたのに大学卒業後は出版社に就職しようとしました(笑) まぁ難しくて結果的にプログラマーとして大手企業に就職したんです。
そこからはゲーム会社に転職してみたり、年収より仕事内容で選んで働いてみたり、色々疲れて地元に帰ってみたりと20代でいろんな働き方を経験しました。
そして気づいたんですね、僕には会社勤めは向いてないと。
だから28歳の時に自分で起業しました。
すごい!20代で起業されたんですね!
はい、それからははじめにお話ししたようにAndroid開発に触れてオープンコミュニティの素晴らしさを知り43歳で今の8×9を起業した感じです。 若い人はどんどん活動的になってほしいと思っています。
僕は今年は喉にポリープができてしまったんでちょっとお休みしていますが、来年からまた活動再開しようと思っています。
努力を惜しまない猫好き
寺園先生は努力家なんですね!
ご自身から見て学生時代にこれはやっておけば良かったなという勉強はありますか?
んー、難しいなぁ…
僕はなんだかんだ言って一生懸命やれることをやった方なので。逆にやらなかった方が良かったと思う教科は英語かなぁ。学校でやったぐらいじゃ喋れないので。
えっ!英語必要なかったなんて言ってしまうんですね…。
あくまで僕はですよ(笑) 学校で点数取れるように勉強してもしゃべれないですからね。
成果主義な考え方がプログラマーっぽいですね(笑)
では勉強以外であった方が良かったと思うものは?
資格ですね。自己紹介の時に何もなくて困ってます(笑)
プロフィール聞かれた時とかだいたい出身大学や取得してる資格を並べるもんですけど、僕は運転免許と古い情報処理系の資格しか持ってなくて。
資格取得は可処分時間が豊富だった学生の頃に力を入れておけばよかったと今になって思います。ちなみに今年から新しいチャレンジがしたくて慶應SFC研究所の研究所員になりました。
研究員!スゴイですね!
寺園先生の話を聞いていると何ごとにもストイックで苦手意識がなさそうに見えます。苦手なものはないんですか?
ありますよ。人と接するのが苦手です…。今日のこのインタビューもけっこう頑張って挑んでます…。
……。そうなんですね(笑) 。今のマイブームとか趣味はありますか?!
マイブームは飼い猫の「マイケル」ですね。
去年の6月に産まれた1歳半の雄ネコです。仕事には全く関係ないけど(笑)
今僕の生活の中でマイケルのことを考えている時間が一番長いです。ペットに関する何かのサービスが作れたりしたらいいなぁと思っています。
理想のプログラミング教材がないなら作ればいい
では、8×9のお仕事について聞かせてください。今一番注力していることは何ですか?
東京エリアをテコ入れすることですね。実は8×9は東京に1教室だけスクール展開しています。
元々は東京を担当していたマネージャが意気込んで開校したんですが、当時は僕も森田さんも関西に住んでいたので上手くキャッチアップができずにいました。
でも今は僕が東京に引っ越したので全力で盛り上げていこうと思っています。
それは心強いですね!では今までで一番注力した仕事はなんですか?
それはもちろん8x9Craft(ハッククラフト)を作ったことですね。
ハックでは最初の頃、
「ComputerCraft」というイギリス人プログラマーが製作したMinecraft®でプログラミングができるツールを教材に使用していたんです。
けっこう本気で使い込んで8×9名義で書籍まで出版したほどです。でもお世辞にも使いやすいとは言えなかったんですね。
プログラマーの生命線とも言えるコードエディタが致命的に使いづらかったり、対応言語がLuaという業務ではほぼ使う機会がないようなものだったり。
使いやすくするために開発面で力になれたらと、作者にコンタクトを試みたこともありましたが、もう開発を継続する意志がないのかWebサイトの更新はずっとストップしたままで…。
もうそれだったら自分達で作った方が理想のプログラミング教材を早く作れそうだなと。
ないなら作ろうって考えるのがすごいですね!躊躇はしなかったんですか?
僕の経験上、品質の高いサービスを作る上で欠かせないのがユーザーから定期的にフィードバックを得ることです。
Androidをはじめオープンソースが当たり前の世の中になったのも、開発者とユーザーの繋がりが上手く機能しているからだと思っています。そして8×9にはレッスンを通してたくさんの生徒からフィードバックを得られる環境がありました。
だから逆に恵まれている環境で開発ができるとすら思いましたね。
今では明光義塾さんやCA TechKidsさんにも8x9Craftを使っていただいているので開発できたことを嬉しく思っています。
そんなわけで 8x9Craftは8×9が存在する限りアップデートし続ける自慢の教材です。
多くの子どもと触れると子育ての考え方が変わる
エンジニアが専業だった昔と、子どもにプログラミングを教えている今とで、何かご自身に変化はありますか?
プログラマーとしての変化よりも父親としての変化が大きかったですね。
子育てってみんな「大きく、優しく」って言うけど、それって子育への余裕というか、理解して俯瞰的に見れる人じゃないとできないと思うんですよね。
多くの人は子どもが何かした時の成功とか失敗の判断って自分の経験上で考えてしまうから、その子の立場から見てどう映っているかが想像ができずに大なり小なりギャップが生まれてしまう。
もちろん僕も最初はそうだったんですが、 8×9で多くの子どもと触れ合う機会ができたことで、自分の経験則に当て嵌めて考えることの無意味さを知りました。
同時にこんな風に育つとこんなことができるんだとか、息子達の子育てだけじゃ経験しなかったであろう子どもの成長を知ることができたので、そこが一番大きな変化かもしれません。
ご自身のお子さんに対しても接し方は変わりましたか?
変わりましたよ。
例えば息子達が「学校に行きたくない」とか「高校に行きたくない」って言ったとするじゃないですか。
昔の僕だったら「ダメだ絶対に!」って言ったと思うんですけど「それもいいんじゃないの?」って思えるようになりましたね。
それで選んで自分で納得するならいいよって思えたのは8×9を作ったからだと思いますね。
ええっ!180度変わってますね(笑)
ホントにむちゃくちゃ変わりましたよ。もしプログラマーで子育てに悩んでいる人がいたら、8×9でインストラクターをやってみてください(笑)
答えを教えるのではなく、辿り着く方法を教える
インストラクターを経験するとそんなに変わるんですね!
では、子どもたちに教えていて面白いと思う時はどんな時ですか?!
生徒が失敗をくり返しながらそれを乗り越えて何かを学んだ姿を目の当りにした時ですね。
感動して涙腺が緩む時もあります。乗り越えてくれたー!って感動もあるし、時には苦悩していた過去の自分が重なったりもします。
では、教えていて難しいと思う時はどんな時ですか?
いやー、これはほんと常にですね。
教えることを意識し過ぎると間接的なインプットが増えて余計難しく感じてしまうんですよね。
だから僕は教えるのは最低限にして基本眺めているんですよ。
答えを知るよりも、答えに辿り着く過程で得る経験値を大切にしてもらいたいと思ってます。
でも僕らはプログラミングを教えるのが仕事なわけだから、そこを見極める必要があるのが難しいなと
寺園先生の授業って子どもと一緒に悩んでる時がありますよね。うまくプログラムが動かなくて「おかしいな~?なんでこうなちゃったんだろうな~」って。あれも演出だったりするんですか?
うわ、よく見てますね(笑)
おっしゃる通りでどこがダメかを指摘してしまうと考えなくなってしまうので、一緒に悩んであげるようにしてます。
そもそも多くの生徒さんは本当は解ける能力があるんです。でも時間内に前に進まないといけないから気持ちが焦ってこんがらがるってことがほとんどなんですよね。
だから僕は一緒に考えて状況を整理してあげることで答えに近づいてもらえるようなアプローチを取っています。
そうだったんですね!それでは、これから挑戦してみたいことはありますか?!
先生が教えなくてもレッスンができるような教材を作りたいと思ってます。
僕の経験から言えることは、先生はきっかけだけでいいと思っていて。いや、きっかけというか学びたいというモチベーションを育てる人であればいいかなと。
ありがとうございます!
このインタビューでは最後に「〇〇をハックする!」って決め台詞をもらうことにしています。寺園先生のハックしたいことをお願いします。
学びを
ハックする!
と言っても深い意味はなく僕ができるのはこれぐらいだなと。
僕はただのプログラマーなので教育に詳しくないし、自分の思想も語らない主義なんです。
それに教育で得るものは子どもによって変わるので、誰かが決めた物差しで成功や失敗を判断しても仕方がないとも思ってます。
だから僕が今の立場で言えることは、教育に必要なのは「実験」のみだということです。
僕は子ども達が楽しんでプログラミングを実験できるように8×9で学びをハックし続けようと思います。
とても素敵な考え方ですね!8×9にもそれが反映されていると思います!
本日はどうも長い時間ありがとうございました!
( 取材:藤田 / 執筆:大原 / 撮影:岩崎 / デザイン:森本 )
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